三角関数の公式は暗記する前に「どこから出るか」で整理する

三角関数の公式は、全部を同じ重さで暗記すると混乱しやすくなります。まず sin・cos・tan の定義を土台にし、そこから「基本関係」「加法定理」「倍角・半角」と枝を伸ばすと整理できます。公式は独立したカードではなく、少数の出発点からつながる家系図として見るのがコツです。

土台は sin²θ+cos²θ=1 と tanθ=sinθ/cosθ

単位円上の点を P(cosθ,sinθ) と見ると、sin と cos は座標そのものです。原点からPまでの距離が1なので、三平方の定理から

cos2θ+sin2θ=1

が出ます。tan は

tanθ=sinθcosθ

です。

たとえば sinθ=3/5 で θ が第1象限なら、cosθ=4/5、tanθ=3/4 と求められます。平方根を取ったあとに正負を決めるときは象限が必要です。

公式を「何を変換する式か」で分ける

公式を覚えるときは、式の見た目ではなく役割を付けます。

  • 1-sin2θ=cos2θ:sin と cos を行き来する
  • tanθ=sinθ/cosθ:tan を sin・cos に戻す
  • 加法定理:角の和・差を別々の角へ分ける
  • 倍角公式:2θ を θ の式へ戻す
  • 半角公式:平方や半分の角を扱いやすくする

「この問題では何を別の形へ変えたいのか」を先に決めると、候補が絞れます。公式を知らないのではなく、入口条件と出口の形を区別できていないことが、つまずきの原因になっている場合があります。

加法定理から倍角公式を作り直す

加法定理

sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ

に α=β=θ を入れると、

sin2θ=2sinθcosθ

です。同様に

cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ

から

cos2θ=cos2θ-sin2θ

が出ます。

さらに基本関係を使えば、

cos2θ=2cos2θ-1=1-2sin2θ

と変形できます。倍角公式を忘れても、加法定理という親から戻せます。

例題:sinθ=3/5 のとき sin2θ と cos2θ

θ が第1象限、sinθ=3/5 とします。基本関係から cosθ=4/5。

したがって、

sin2θ=2×35×45=2425

また、

cos2θ=(45)2-(35)2
=725

です。別の形 1-2sin2θ を使っても 1-18/25=7/25 となります。別ルートで同じ答えになるかを確かめること自体が検算です。

符号と記号の位置で落とさない

加法定理で、sin は「sin cos + cos sin」、cos は「cos cos − sin sin」です。また、√(1-sin2θ) から cos を求めるとき、象限を見ないまま正にするのも典型的な誤りです。

さらに、sin2θ は sin(θ2) ではありません。「sinθ全体を2乗」です。公式の文字列だけを眺めるより、各記号が何にかかっているか声に出して確認すると、混同を減らせます。

暗記と復元は使い分ける

試験中に毎回すべてを導出する必要はありません。基本関係や加法定理のような「親」の式はすぐ使えるようにし、倍角・半角などは親から出ることを理解した上で頻出形を覚えるのが現実的です。

一方、復元だけできても問題で公式を選べなければ使えません。週に一度は家系図を復元し、普段の演習では「何を何へ変換したいか」を書いて選ぶ、という二段構えが向いています。

次の練習は公式名を隠して目的だけ書く

問題集で三角関数の式が出てきたら、いきなり公式を書かずに余白へ「sinとcosだけにする」「2θをθへ戻す」「平方を1次にする」のように目的を書いてください。そのあとで必要な式を選びます。

数字や角度が変わっても、何をどの形に変えたいかは同じです。公式を文字列として覚える状態から、変換の道具として選ぶ状態へ移すことが次の目標です。

公式を覚え直すときの優先順位

一度に全部を復習するより、まず基本関係と加法定理を白紙から書けるか確認し、次に倍角をそこから復元します。半角公式は倍角公式から作れることを確かめます。最後に実際の問題で「この変形の目的は何か」を言葉にします。親の公式、派生公式、使用場面の三段階に分ければ、忘れた場所も特定しやすくなります。

公式の家系図を自分で一度描く

白紙の中央に sin2θ+cos2θ=1 と加法定理を書き、そこから倍角、さらに半角へ矢印を伸ばしてみます。矢印には「同じ角を代入」「基本関係で置換」のように、何をしたかを書きます。

この図を作る目的はきれいなまとめノートではありません。公式を忘れたとき、どこまで戻れば復元できるかを確認することです。全部を一列の暗記カードにすると、一つ抜けた瞬間に止まります。親子関係を作っておけば、記憶が抜けても別の式から戻れます。

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