日食・月食はなぜ毎月起きない? 月の軌道の傾きで考える

新月なら日食、満月なら月食になる?

日食は月が太陽を隠す現象で、月食は地球の影が月に落ちる現象です。新月は毎月のようにやって来て、満月も繰り返されます。では、なぜ日食や月食は毎月起きないのでしょうか。答えは「三つの天体が同じ方向に並ぶこと」と「同じ平面上で影が重なること」が別だからです。

新月のとき、地球から見た月は太陽とほぼ同じ方向にあります。しかし、空の上で同じ方向に見えるというだけでは、月が太陽の円盤を覆うとは限りません。満月でも同じで、月が太陽と反対方向にあるだけでは地球の本影へ入るとは限らないのです。軌道を一枚の紙の上に描いた模型では、この違いが見えにくくなります。

月の通り道は約5度傾いている

地球が太陽の周りを回る面を基準にすると、月の公転軌道面は約5.1度傾いています。交わる部分は二つあり、その近くで新月や満月になると食が起こる可能性が高まります。多くの新月では月が太陽の少し上か下を通り、月の影が地球に届きません。多くの満月では月が地球の影を外れて通過します。

二つの輪を少し傾けて交差させる模型を考えると、傾きの意味が分かります。輪が交わるのは一部だけです。月が一周するたびに地球・太陽と並んで見えるとしても、同時に交点の近くへ来るとは限りません。日食は新月に加えて軌道上の位置、月食は満月に加えて地球の影との位置が条件となります。

地球全体で起きることと、自分の町で見えること

日食が地球上のどこかで起きても、観測できる地域は限られます。月が落とす本影は地球上の一部を通り、皆既日食を見るにはその細い範囲へ入る必要があります。部分日食はより広い地域から見られる場合がありますが、地球の裏側や経路から離れた地域では同時刻に見えません。

月食は、月が地平線より上に見えている広い地域から同時に観測できます。日食より月食の方を自分が目撃しやすいと感じても、発生そのものの回数が必ず多いという意味ではありません。ここでは「現象が起きた数」と「自分の場所から見えた数」を分けて考える必要があります。記録を作るなら、世界で起きた食と、自分の地域の可視条件を別欄にしましょう。

予報は新月と満月だけを並べればいい?

例えば翌年の新月の日を12回ほど一覧にしたとします。その中のどの日に日食が起きるかは、新月という条件だけでは決まりません。月が軌道の交点の近くにいるかという条件も調べる必要があります。国立天文台の暦計算室は、この軌道の傾きと交点を使って食の周期を説明しています。

また日食の種類は、月と太陽の見かけの大きさにも関係します。月が太陽を完全に隠す皆既日食、周囲に太陽が輪のように残る金環日食などがあります。月や地球の軌道は完全な円ではなく、距離が変わるためです。「並んだか」「どこから見たか」「見かけの大きさはどうか」を順に分けて考えると、予報に必要な条件が見えてきます。

安全に観察するための条件

日食を見ようとして太陽を直接見ることは危険です。普通のサングラス、黒い下敷き、色の濃いフィルムなどは安全な観察方法ではありません。日食観察専用の適切な保護具や、太陽を直接見ない投影方法を利用し、観察施設などの指示を守ってください。特に双眼鏡や望遠鏡で太陽を直接のぞくことは、専用の正しい装備なしでは重大な眼の損傷につながります。

月食は太陽を直接のぞく必要がないため、通常の肉眼観察ができます。ただし暗い場所へ出かける場合は足元や交通の安全を優先してください。日食と月食は「食」という名前こそ共通していますが、光を見る向きが違うため観察方法の安全条件も異なります。

新月と満月の回数から食を数えられない理由

一年の新月を仮に12回、満月を12回と数えたとしても、日食12回と月食12回が起きるわけではありません。食が起きる可能性のある時期は、月の軌道面と地球の公転面の交点が太陽の方向に来るころに集中します。この時期は「食の季節」と呼ばれ、半年ほど間隔を置いて繰り返されます。月の満ち欠けの周期と、食を起こせる位置の周期という二つの条件が重なったときに現象が起こります。

理科の自由研究なら、毎月の新月・満月をカレンダーに印をつけ、国立天文台が公開する日食・月食の一覧と比べてみましょう。「新月だから起こる」と「新月でなければ起こらない」は論理的に違います。後者は必要条件を述べていますが、新月は日食が起こるための必要条件ですが、十分条件ではありません。同じことは満月と月食にも当てはまります。新月でも日食がない日の方が多い理由を、必要な条件を一つずつ書き足して説明してみてください。

見える食の種類が場所で変わる理由

同じ日食でも、ある町では皆既日食、別の町では部分日食、さらに離れた場所では何も見えないことがあります。月の本影と半影が地球のどの部分に当たるかで、観測できる状態が異なるからです。地球に光が当たる面の上へ、小さな円形の影を動かす模型を描いてみましょう。影の中央を通る人と端にいる人は、同じ時刻に違う太陽を見ます。月食でも地球のどの地域から月が地平線上にあるかが観察条件になります。食のニュースでは、現象が起こる日付だけでなく、観測できる地域・時刻・安全な見方も同時に確認することが必要です。

何を図に書き足すと説明が正確になる?

理科のノートに太陽・地球・月を一直線に描くと、日食や月食を説明した気になりやすくなります。そこで、月の軌道が地球の公転面から少し傾いていることを斜めの線で描き足してください。次に、月が交点の近くにいる場合と離れた場合の二枚を並べます。それだけで「新月=日食」ではない理由が図から分かります。

最後に、地球上の観測地点を一つ書き加えます。地球全体で食が起こっても、自分の町で見えるかは別の条件です。正しい図とは、部品が多い図ではありません。誤解の原因になっていた条件を、必要な位置に一つ足せる図です。

参考資料

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