10000mAhのモバイルバッテリーでスマホは何回充電できる? 電圧をそろえて考える

モバイルバッテリーに「10000mAh」と書いてあると、5000mAhのスマートフォンをちょうど2回充電できそうです。しかし、実際に使うと2回に届かないことがあります。故障とは限りません。見落としやすいのは、二つのmAhが同じ電圧で測られているとは限らないことです。容量表示をエネルギーの量として読み直してみましょう。

mAhは電池に蓄えた電気量の目安

mAh(ミリアンペア時)は、電流と時間を掛けた電気量の単位です。たとえば1000mAの電流を10時間流すと、計算上は10000mAhです。ただし、電池が実際にその電流を一定時間出せるかは条件次第です。mAhの数字だけでは、取り出せるエネルギー量を完全には表せません。

電池には電圧があります。おおまかなエネルギー量を求めるには、Ahに換算した容量へ電圧Vを掛け、Wh(ワット時)に直します。10000mAhは10Ahなので、電池セルの公称電圧を3.7Vと仮定すれば、10×3.7=37Whとなります。ここでは説明しやすい代表的な仮定を置いています。

モバイルバッテリーのUSB出力は5Vや、対応する急速充電方式の別の電圧になる場合があります。内部の電池セルとUSB端子で電圧が違うなら、同じmAhの数字をそのまま比較できません。単位の名前が同じでも、測定している場所と条件が違うのです。

5Vへ変えると理論上のmAhも変わる

37Whのエネルギーを、損失ゼロで5VのUSB出力に変えられたと仮定します。このとき理論上の出力容量は37÷5=7.4Ah、つまり7400mAhです。内部電池の10000mAhとUSB出力の7400mAhは、同じエネルギーを違う電圧で表した数字です。

現実の変換回路には損失があるため、USBから取り出せる量は理論値より少なくなります。たとえば変換効率を説明用に80%と仮定すれば、37Wh×0.8=29.6Wh、5Vでは5920mAh相当です。これは特定の商品を実測した数字ではありません。条件を変えれば結果も変わります。

Ankerの製品サポートにも、内部電池の公称容量と5V出力の定格容量が異なり得る理由として、電圧変換と回路損失が説明されています。「10000mAhと書いてあるのに5Vで10000mAh出ない」という現象は、表示基準の違いから生じる場合があるのです。

スマホ側にも充電の損失がある

モバイルバッテリーのUSB出力からスマートフォンへ届いた電気が、すべて電池へ蓄えられるわけではありません。スマートフォン側でも電圧変換や充電管理を行い、画面や通信にも電気を使っています。ケーブルの抵抗や端末の温度なども実測に影響します。

例えばスマートフォンの電池を公称3.85V・5000mAhと仮定すると、計算上の容量は約19.25Whです。先ほどのモバイルバッテリーの出力29.6Whを単純に割れば約1.54回分ですが、これはスマホ側の損失をまだ含んでいません。端末を操作しながら充電すれば、さらに条件が変わります。

反対に、スマートフォンが完全に空でない状態から充電するなら、1回の充電で必要な量は満充電までの全容量より少なくなります。「何回」という問いには、何%から何%までを1回と数えるのかという条件が必要なのです。

箱に書かれた容量のどこを読むか

製品仕様では、セル容量、定格容量、出力容量などの数字が分けて書かれることがあります。各数字の横に電圧が書かれていれば、Whへ直して比較できます。たとえば10Ah・3.7Vと6Ah・5Vなら、それぞれ37Whと30Whであり、そもそも比較している場所が違う可能性があります。

別の製品Aが10000mAh・3.7V、製品Bが8000mAh・5Vと表示していた場合、Aは37Wh、Bは40Whという単純計算です。この二つが同じ種類の容量表示であるとは限りませんが、mAhだけでAの方が大きいと判断できないことは分かります。

購入時には、出力ポートの種類、充電できる機器の対応方式、安全機能も確認しましょう。容量だけ大きくても、使いたい機器へ必要な電力を供給できなければ用途に合わない場合があります。

実際に何回使えるかを安全に確かめる

所有している機器で確かめるなら、スマートフォンの残量を同じ程度にそろえ、通常の使用環境で何%分回復したかを記録します。無理に端末の電池を0%まで使い切る必要はありません。例えば40%から80%への回復を何回できたかであれば、無理のない範囲で比較できます。

端末の残量表示は電池の正確なWh計ではなく推定値です。画面の使用や気温でも結果が変わるため、記録した回復率の合計をそのまま厳密な充電回数だと見なさない方がよいでしょう。実測は仕様上の理論値を確かめる補助と考えてください。

結論として、モバイルバッテリーの容量は「mAhの大小」だけで判断しないことが重要です。公称電圧を確かめ、Whにそろえ、変換損失とスマホ側の使用条件を考えると、「10000mAhで2回?」という問いの答えを現実的に見積もれます。

Whで比べても条件が残る

同じWhの二つのバッテリーでも、出力可能なW数、充電速度、持ち運びやすさが異なる場合があります。Whはエネルギー量を比べる便利な物差しですが、使い勝手のすべてを表すわけではありません。航空機へ持ち込む場合などには容量や輸送に関する規則も関係するため、利用する交通機関の最新の案内を確認してください。

旅行用に必要な量から逆算する

一日でスマートフォンの電池を約12Wh分使い、充電器から使える分が約30Whだったと仮定します。単純な割り算なら30÷12=2.5日分ですが、実際にはスマートフォン側の損失や待機中の消費があるため余裕を見たいところです。この数字はモデル例で、特定の旅行や機器で保証される回数ではありません。

まず自分が一日に何%減らすかを観察し、次に予備として何日分必要かを考えます。容量、重さ、充電速度のどれを優先するかで選ぶ製品も変わります。「大きい数字を買う」から「自分の必要量を見積もる」へ問いを変えると、容量表示がもっと役立つ情報になります。

参考資料

おすすめの記事