多数決は公平なの? 同じ17人でも投票方法で結果が変わる実験

クラスの遠足で、三つの行き先から一つを決めることになりました。動物園、水族館、科学館です。みんなで投票すれば、公平に決められるでしょうか。

多数決は、よく使われる決め方の一つです。でも、何を一票として数えるかによって結果が変わることがあります。同じ17人が同じ好みを持っていても、「一番好きな行き先だけを書いてもらう」場合と「二つに絞って選び直す」場合では、選ばれる場所が違うかもしれません。

この記事では、実際のクラスや選挙の調査ではない架空の17人を使い、決め方そのものを考えます。多数決が悪いと決め付けるためではなく、ルールが答えをどう変えるかを確かめる思考実験です。

まず、第一希望だけで投票します

17人の第一希望が次のように分かれたとします。

行き先 第一希望の人数
動物園 7人
水族館 6人
科学館 4人
合計 17人

一人一票で第一希望を出し、最も票が多い場所に決めるなら、動物園が選ばれます。計算は簡単です。7票が最多だからです。

ただし、17人の過半数は9人以上です。動物園を第一希望にした7人は、全体の半分には届いていません。それでも、ほかの候補より票が多いので勝ちます。

ここで大切なのは、「最多得票」と「過半数」は同じ意味ではないことです。最多得票で選ぶ方法を採用すること自体は一つのルールですが、その結果を「17人の半数以上が第一希望として支持した」と説明するのは誤りです。

第二希望まで聞くと、見えてくるものがあります

次に、全員の好みをもう少し詳しく聞いたとします。第一希望だけでなく、第二希望、第三希望まで書いてもらうのです。

架空の17人は、次の三つのグループに分かれていたとします。

人数 第一希望 第二希望 第三希望
7人 動物園 水族館 科学館
6人 水族館 科学館 動物園
4人 科学館 水族館 動物園

第一希望だけなら、もちろん動物園が7票で勝ちます。では、動物園と水族館の二つを一対一で比べたらどうでしょう。

動物園を上に選ぶのは7人です。水族館を動物園より上に選ぶのは、第二・第三グループを合わせて10人です。したがって、水族館が10対7で勝ちます。

動物園は三候補の中で第一希望が最多だったのに、水族館との直接比較では負けています。矛盾ではありません。「第一希望だけを数える」と「二候補のどちらが好みかを比べる」では、集計している情報が違うためです。

ここから「水族館が本当の民意で、動物園は間違い」と結論する必要はありません。どちらの決め方にも、先にルールとして何を尊重するかがあるからです。

決め方を変えると、なぜ同じ人たちなのに答えが変わる?

第一希望だけの投票では、その人が最も好きな候補に集中して一票を入れます。二番目に好きな候補が何かは分かりません。一方、二候補の直接比較では、その二つのうちどちらをより好むかを数えます。

例えば、科学館を第一希望にする4人は、最初の投票では水族館に票を入れていません。でも動物園と水族館だけから選ぶなら、水族館を選びます。これは意見が急に変わったわけではありません。選べる候補が変わったので、もともとの好みの別の部分が表れただけです。

このように、集計結果は本人の希望だけでなく、質問の形や選択肢にも影響されます。「何人が何を望んだか」という数字を見るときは、どのように聞いたかを合わせて確認することが必要です。

では、点数を付けたらどうなるでしょう

もう一つ、第一希望に2点、第二希望に1点、第三希望に0点を付ける方法を試します。先ほどの表を使い、候補ごとの合計点を出しましょう。

動物園は、7人から2点ずつ、残り10人から0点ずつなので14点です。科学館は6人から1点、4人から2点なので14点です。水族館は7人から1点、6人から2点、4人から1点なので、7+12+4=23点 になります。

行き先 第一希望2点・第二希望1点・第三希望0点での合計
動物園 14点
水族館 23点
科学館 14点

この方式では水族館が選ばれます。「みんなの第一希望を優先する」よりも、「第一・第二希望をあわせた支持の広さ」を反映しやすい仕組みになっているからです。

ただし、この2・1・0という点数の付け方にも前提があります。一位と二位の差、二位と三位の差を同じ1点として扱っているのです。実際の好みの強さが必ず等間隔だとは限りません。数字を使うと客観的に見えても、どのように点数を作ったかは人が決めています。

公平さには、どんな意味がある?

「一人が一票ずつ持つ」ことを公平だと考えることができます。「できるだけ多くの人が強く嫌がらない案にする」ことを大切にする場合もあります。「少数派の希望が毎回無視されないようにする」ことも、別の公平さです。

これらは似ているようで、同じ条件ではありません。先ほどの実験で、第一希望7票の動物園と、点数23点の水族館のどちらを選ぶかは、何を大切にするかにかかわります。

遠足なら、投票の前に「行けない人が出ないか」「費用や移動時間の条件を満たすか」といった制約を確認することも大切です。多数決をしてから、車いすで参加する人が使えない施設だったと気付いたら、投票の数字だけでは問題を解決できません。これは特定の施設について述べた事実ではなく、候補選びの条件を考えるための例です。

つまり、決め方の公平さは、票を数える瞬間だけにあるわけではありません。候補をどう用意するか、参加できる条件が揃っているか、少数の人が困る点をどう扱うかにも広がります。

家族でも試せる「答えが変わる」実験

三つの夕食候補を紙に書き、それぞれの人に第一・第二・第三希望を付けてもらいます。最初は第一希望だけで集計し、次は2・1・0点を使って集計します。二つの結果が同じになったら、今度は二候補の直接比較をしてみてください。

結果が違ったときに「どっちが正しい?」と急がず、「この方式は何を数えている?」と問い直してみましょう。違いが出なくても、全員が似た好みだったからなのか、偶然なのかを考える余地があります。

この作業は、思考OSの**「もしもを置く」と「制約を置く」**の実践例です。「同じ人たちでも、集計ルールだけ変えたらどうなる?」という条件変更から、見えていなかった選択の構造を確かめられます。実際の公職選挙の制度や法令を説明する記事ではないため、この計算例を現実の選挙制度へそのまま当てはめないでください。

まとめ:多数決の前に、何を決める方法か確かめる

架空の17人の実験では、第一希望だけを数えると動物園が7票で最多でした。二候補の直接比較では水族館が10対7で勝ち、順位に点数を付ける方法でも水族館が23点で最多でした。

人の好みを変えなくても、質問や集計のしかたを変えると結論が変わります。だから、結果の数字だけを見て「みんなの希望はこれだ」と決める前に、何を尋ね、何を数え、どんな公平さを大切にしたのかを確認する必要があります。

正しく数えることは大切です。そして、何を数えるかを考えることも、それと同じくらい大切なのです。

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思考OS「もしもを置く」、思考OS「制約を置く」。今回の題材では、既存の考え方を具体的な問題に当てはめています。

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投票する人を変えなくても、集計方法を変えたら結果はどうなるかを確かめられます。この見方を別の場面にも広げたいときは、思考OS 第6章「もしもを置く」を読んでみてください。

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