
3分実験:返事を考える前に、相手の言葉を一つ拾ってみる
まずやってみる
こんなことを言われたとします。
「暑かったですね。駅から歩いただけで汗だくになりました」
まず、次の二つの返しを見比べてください。
A
「そうですね」
B
「駅から歩いただけでですか。それはきついですね」
どちらが正しいかを決める必要はありません。代わりに、少しだけ見てほしいところがあります。
1
相手の一言の中に、どんな情報が入っているでしょうか。
たとえば、
「暑かった」
「駅から歩いた」
「それだけで汗だくになった」
などがあります。
2
AとBは、そのうち何を拾っているでしょうか。
Aは、会話全体に返しています。Bは、「駅から歩いただけで汗だく」という部分を選んで返しています。
3
今度は自分でも、一つだけ選んで返してみてください。
「暑かった」を拾ってもいいですし、「駅から」を拾っても構いません。
ここから種明かし
会話が続かないとき、「何か面白いことを言わないと」と考えることがあります。
でも、返事の材料は、すでに相手の発言の中にあることがあります。
今回のBは、新しい話題を作っていません。相手が置いた情報の中から、一つを選んで返しただけです。
それでも、Aとは少し違う会話に見えます。
返事を作ることは、ゼロから話題を作ることだけではありません。
相手が出したものの中から、何を拾うかを決めることでもあります。
ここまでの答えを見比べてみよう
| <見るところ> | <たとえば> |
|---|---|
| 相手が出した情報 | 暑かった/駅から歩いた/汗だくになった |
| Aが拾ったもの | 発言全体 |
| Bが拾ったもの | 駅から歩いただけで汗だくになったこと |
| 次の会話の方向 | 何を拾ったかによって変わる |
コミュニケーションで見ると?
「会話が苦手」というと、話題の少なさが問題だと思いやすくなります。
でも、この実験で動かしたのは話題の量ではありません。
すでに出ている情報への注意の向け方です。
同じ相手、同じ発言でも、何を拾うかで次の一往復は変わります。
会話を続ける方法の一つは、「次に何を言おう」と考える前に、「今、相手は何を置いた?」と見ることです。
脳のOSで見ると?
選ぶと捨てる
一つの発言には、複数の情報が含まれています。
しかし、一度の返答ですべてを拾う必要はありません。
「駅から歩いた」を選べば、「暑かった」やほかの部分はいったん脇に置かれます。
別の部分を選べば、会話は別の方向へ進みます。
ここで動かしていたのは、何を話すかより先に、何を選ぶかという頭の操作です。
もう一度だけ
次の一言を見てください。
「昨日、久しぶりに高校の友達と名古屋で飲んできました」
全部に返そうとせず、一つだけ拾ってみてください。何を選んだかで、次の会話は少し変わるはずです。

