氷に塩をかけると溶けやすいのはなぜ? 凍る温度が変わる実験

氷の上に塩をまくと、何もまかない氷とは違う溶け方をすることがあります。冬の道路で融雪剤が使われるのも、氷が溶ける条件と関係があります。「塩が熱くなるから氷が溶ける」と思いがちですが、説明の中心はそこではありません。水に物質が溶けると、凍り始める温度が変わるという性質が鍵です。氷・水・塩の三つを分けて考えてみましょう。

水は0℃で凍る、には条件がある

普通の気圧の下で、混じり物の少ない水は約0℃を境に氷と液体の水が共存できます。しかし、水が塩などを含む場合は事情が変わります。水に溶けた塩の粒子が、液体から氷になるときのつり合いに影響を与えるためです。同じ気圧でも、塩水は純粋な水より低い温度まで液体でいられることがあります。

この現象は凝固点降下と呼ばれます。「凝固点」は液体が固体になる温度の目安で、その温度が下がるという意味です。塩をまいたから氷自体が魔法のように熱を持つわけではなく、塩が溶け込んだ水が凍りにくくなることで、氷と液体のつり合いが変化します。

氷の表面にある水が塩を溶かします

食塩水には、濃度が約23%のとき約−21℃で凍結する共晶点があります。氷へ塩を足しても、温度が際限なく下がり続けるわけではありません。これは水と塩の混合物の性質による下限の目安です。

氷の表面には、条件によって薄い液体の水が存在します。そこへ食塩が触れると、その水に塩が溶け込みます。塩水ができると、純粋な水のときとは凍る温度が違うため、周囲にある氷がさらに溶ける方向へ変化することがあります。溶けた水にも塩が混ざり、氷と塩水が接する部分で現象が進みます。

ただし、「塩をかければ必ず速く溶ける」とだけ覚えるのは不正確です。温度、塩の量、氷の大きさ、周囲から流れ込む熱、水があるかどうかなどで進み方は変わります。塩が溶け込めなければ、塩水としての作用も生じにくくなります。条件を一緒に考えることが大切です。

なぜ氷と塩で、かえって冷たくなることがある?

氷が溶けて水になるにはエネルギーが必要です。氷の中で水分子同士がまとまっている状態から液体になるには、その結び付き方を変えなければならないためです。周囲から熱を受け取って氷が溶ければ、近くの物や氷水の混合物の温度が下がる場合があります。

塩を加えた氷水では、塩水ができることで凍り直しにくくなり、氷が溶ける過程が進むことがあります。そのとき必要な熱が周囲から奪われ、氷と塩水の混合物が0℃より低くなる場合があります。アメリカ化学会の中学化学教材でも、塩を加えた氷水が冷える理由として、溶ける過程と凍る過程のエネルギー収支を説明しています。

「氷が溶ける」と「周りが温かくなる」は同じ意味ではありません。氷が溶けるために熱を吸収すれば、むしろ周囲を冷やすこともあります。この逆に見える関係が、氷と塩のおもしろいところです。

氷二つで比べるときの観察ポイント

同じ大きさに近い氷を二つ用意し、それぞれを別の透明な容器に置きます。一方には少量の食塩をまき、もう一方はそのままにします。両方の容器を同じ室内に並べ、時間ごとの氷の形や底にできた液体の様子を記録しましょう。氷の大きさや容器の材質が大きく違うと、熱の伝わり方が異なるため、条件をそろえる必要があります。

塩を入れた方が早く溶けたように見えても、それだけで「塩がどれほど凝固点を下げたか」という数字は求められません。室温から受ける熱の違いや、食塩がどこまで溶けたかも関係するからです。温度計がある場合も、感温部の位置と測る時刻をそろえ、測った温度と、予想した凍る温度を混同しないようにしましょう。

氷と塩の混合物は通常の氷より低い温度になることがあります。素手で長く触れたり、皮膚に押し当てたりしないでください。温度を確かめるために指で直接触れる必要はありません。

「塩をたくさん入れれば無限に下がる」は誤解です

食塩が溶ける量には限りがあります。また、塩水と氷がどの温度で共存できるかには、濃度による違いがあります。食塩水では、ある濃度に近づくまで凝固点が下がりますが、何でも好きなだけ塩を入れれば温度が下がり続けるわけではありません。

例えば濃い食塩水は、薄い食塩水と同じようには振る舞いません。溶け残った塩が出ることもあります。道路の融雪剤も、気温が非常に低い場所や水分が不足した条件では、期待した働きが得にくくなります。塩が効く条件と、効きにくい条件があると理解すると、日常の現象に応用しやすくなります。

数字の意味を確かめる:温度が下がるとは?

純粋な水の凝固点を約0℃、ある条件の塩水の凝固点を例えば−5℃と仮定します。このとき、「凝固点が5℃下がった」と言います。−5℃の塩水が必ずそこまで冷たくなるという意味ではなく、固まる・溶ける状態の境目が変わったという意味です。0℃と−5℃の差を5℃と読むことと、実際に何℃だったかを測ることは別です。

具体的な凝固点は塩の種類や濃度で変わるため、食塩を一さじ入れたから必ず−5℃になるとは言えません。計算用の例と観察した事実を混ぜないようにします。理科で数字を使うときは、何を測った値で、何を仮定した値なのかを分ける習慣が役に立ちます。

道路の融雪とアイス作りに共通すること

冬の道路では、水や氷の凍る条件を変えて、凍結を防いだり氷を溶かしたりする目的で塩類が使われることがあります。しかし、道路に塩をまくと車や周囲の設備に影響することもあるため、家庭でむやみに散布するものではありません。使う場所や環境に合わせた管理が必要です。

一方、昔ながらのアイスクリーム作りでは、氷と塩を入れた外側の容器で材料を冷やす仕組みが利用されます。氷と塩の混合物が0℃より低い温度になり得るので、材料から熱を奪いやすくなるのです。ただし、食べる材料の中へ塩を直接混ぜるという話ではありません。塩を入れる場所と、冷やされる場所を分けることが重要です。

条件を分けると「逆に見える現象」が説明できる

氷が溶けるのに温度が下がること、塩を加えると凍りにくくなること、0℃より低い塩水が液体のままでいられることは、別々の不思議に見えるかもしれません。しかし、塩が溶けた水の凝固点と、氷が溶けるときに必要な熱を区別するとつながります。

まず「何に塩が溶けたか」、次に「何℃で凍る条件になったか」、最後に「溶けるための熱をどこから受け取ったか」を順番に考えてみてください。溶けやすさ・温度・熱の移動を同じ言葉で片付けないことが、正確な説明への近道です。

参考資料

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