
ふくらませた風船を涼しい場所へ移すと、少ししぼんだように見えることがあります。空気が抜けたのでしょうか。それとも、中の空気の性質が変わったのでしょうか。「空気の量が変わらなくても、温度によって体積が変わる」という考え方を使うと、風船の大きさを数字で予想できます。ただし、実際の風船にはゴムの伸び方も関わるので、計算どおりに縮むとは限りません。原因を一つずつ整理してみましょう。
冷えた風船の中で何が起きている?
風船の中の空気は、小さな粒子である分子が動き回っている気体です。室温でふくらませた風船を冷蔵庫の中など涼しい場所に置くと、しばらくして風船の中の空気も冷えます。温度が下がると、気体分子の運動の様子が変化します。周囲と力のつり合いを保つため、風船の内側の圧力や体積も変わり得ます。
ここで気をつけたいのは、風船は硬い箱ではないということです。箱なら容器の体積をほぼ一定に保ったまま、内側の圧力が変わります。一方、風船のゴムは伸び縮みできます。そのため、空気が冷えたときに「気体の体積が小さくなる」という変化が観察しやすいのです。ただし、ゴムには弾力があり、内圧が外圧と厳密に同じわけでもありません。
「冷たい空気は少ない」と決めつけない
冷やしただけで、空気の分子が全部外へ出ていったわけではありません。口をしっかり結んだ風船では、短時間なら中の気体の量がほぼ一定だと考えることができます。したがって、分子の数と風船の体積を同じものとして扱わないことが重要です。
同じ量の空気でも、温度・圧力・体積の組み合わせは変化します。温度が下がり、気体がより小さな体積を占めるようになれば、「小さく見える」のは必ずしも空気漏れの証拠ではありません。逆に、何時間も置いてしぼみ続けたり、室温に戻しても元に戻らなかったりしたら、結び目やゴムを通した気体の漏れなど、別の理由も検討する必要があります。
一定の圧力なら、体積は絶対温度に比例する
気体の量と圧力が一定という条件の下では、理想気体の体積は絶対温度に比例します。学校では「シャルルの法則」と呼ばれる関係です。記号で書くなら、初めの体積をV₁、絶対温度をT₁、後の体積をV₂、絶対温度をT₂として、V₂÷V₁=T₂÷T₁です。
大切なのは「何を一定にしたときの関係か」という条件です。気体が外へ漏れたら分子の量が変わるので、この式をそのまま使えません。圧力が大きく変わる容器も同様です。実際の風船でも内外の圧力差やゴムの硬さが変わるため、これはまず仕組みを理解するための近似と考えましょう。
25℃から5℃に冷やすと、何%小さくなる?
例として、初めの体積が2.0Lで、25℃の気体を5℃まで冷やす場面を想像します。ただし、気体の量と圧力が一定で、理想気体として振る舞うと仮定します。計算には摂氏の数字をそのまま使わず、絶対温度を使います。
25℃は約298.15K、5℃は約278.15Kです。したがって、後の体積は2.0×278.15÷298.15≒1.87Lになります。体積の割合は約0.933なので、この理想条件なら約6.7%減少する計算です。単に「25から5へ下がったから5分の1になる」などと計算すると大きく間違えます。
ただし、これは実物の風船が必ず1.87Lになるという予報ではありません。温度が中まで均一になる時間、ゴムの張り方、風船内部の圧力、湿った空気が含まれるかどうかなどで測定値はずれます。数字は予想の基準として役立ちますが、観察した結果と区別して扱いましょう。
風船の「幅」を測ると、体積と違う数字になる
風船のふくらみを定規で測るときには、体積と直径を混同しやすくなります。もし風船が球に近く、相似形のまま縮むとしたら、体積は直径の3乗に比例します。体積が約6.7%小さくなったとしても、直径が同じ割合だけ短くなるわけではありません。
体積の比を約0.933としたとき、直径の比はその3乗根で約0.977です。直径が20cmなら、理想化した計算では約19.5cmに相当します。変化は約0.5cmで、定規の当て方や風船の形の違いに埋もれるかもしれません。測る量が「周囲の長さ」なのか「最大の幅」なのかも揃える必要があります。
家庭で試すなら、同じ風船を前後で観察しよう
ふくらませて結んだ風船と、柔らかい巻き尺や紙テープを用意します。室温で風船の最も太いところに紙テープを一周させ、長さの印を付けます。その後、風船を冷蔵庫などの涼しい場所にしばらく置いてから同じ位置の周囲を測り、室温へ戻して再び測ります。冷蔵庫の食品や衛生面に配慮し、風船は清潔な袋などに入れて扱います。
この実験は、同じ風船を繰り返し測ることが大切です。別々の風船を比べると、厚みやゴムの伸び方、最初の空気量が異なり、原因を絞れません。測る人や測定位置もできるだけ同じにしましょう。風船を過度にふくらませたり、火・熱湯・ドライアイスなどを使って温度を変えたりする必要はありません。破裂した風船の破片は小さな子どもが口に入れないよう片付けます。
室温へ戻すと大きさが戻るのはなぜ?
もし気体が漏れておらず、ゴムの状態も大きく変化しなければ、冷やして小さくなった風船を室温へ戻すと、ふくらみも戻る方向へ変わります。温度が戻り、気体の体積と圧力のつり合いも元の状態に近づくためです。
観察で戻り方が完全でなくても、すぐに法則が間違っているわけではありません。風船は形が不規則ですし、温度が均一になるのに時間がかかります。結び目のすき間やゴムを通した気体の移動なども考えられます。結果が予想と違ったときこそ、どの条件が守られたかを確認してみてください。
空気の量・圧力・体積・温度を一つずつ区別する
気体の説明が分かりにくくなる理由は、四つの量を一度に動かしてしまうことです。空気の量を増やして風船をふくらませる場面と、空気の量を一定にして冷やす場面では、変えている条件が違います。硬い容器を冷やす場合は体積が一定なので、主に圧力の変化を考えます。
摂氏温度と絶対温度の違いを理解したら、次は絶対温度を使って気体の体積の変化を予測してみましょう。見た目の「小さい」「大きい」だけではなく、量を一定にしたのか、圧力を一定にしたのか、どこを測ったのかを説明できれば、風船という身近な道具から科学的な考え方を学べます。
参考資料
- OpenStax「Chemistry 2e — Chapter 9 Summary」 参考資料|openstax.org
- OpenStax Chemistry 2e|9.2 気体の圧力・体積・温度の関係

