
複雑な話を一枚の図にすると、文章より早く理解できることがあります。でも、分かりやすくするために情報を減らした結果、大事な条件が見えなくなることもあります。図を疑うというのは、すべての図が間違っていると考えることではありません。何を見せ、何を省いた図なのかを確認することです。
「四角い地図」の中には何がない?
教室の座席表を思い出してください。四角い枠を並べた図は、誰がどこに座っているかを理解するのに便利です。しかし実際の机の大きさ、通路の広さ、窓からの光、見通しまで正確に表しているとは限りません。席替えの話し合いには十分でも、車いすで通れるかを判断するには情報が不足するかもしれません。
同じ図でも、使う目的によって十分かどうかが変わります。「教室のどこか」を知るための図と、「安全に移動できるか」を調べる図には、必要な情報の量が違います。
矢印は必ず原因を表すのでしょうか
「勉強時間→テストの点数」という図を見ると、勉強時間を増やせば点数が上がるように感じるかもしれません。しかし矢印が「因果関係」を示すのか、「関連する二つの項目」を示すのか、説明がなければ決まりません。
例えば、学習内容が合っていなかったり、睡眠不足で集中できなかったりすれば、時間だけでは説明できない結果が生まれます。図の矢印を見つけたら、その矢印の意味を確認します。図の中にない要因があり得るかも考えましょう。
図に描けない「例外」の扱い
架空の仕事の手順図で「申し込み→確認→発送」と三つの箱を並べたとします。通常の流れとしては十分かもしれません。しかし在庫切れ、入力ミス、支払い不成立のときには別の分岐が必要です。初めからすべての例外を描くと、図が読みにくくなることもあります。
だからといって、例外を省くことが必ず悪いわけではありません。通常の流れを示す図なら「例外時の処理は別図を参照」と書けばよい場合もあります。省略することと、省略を隠すことは別です。
図の面積は数字の大きさを正確に表している?
二つの円の大きさで割合を表す図を考えます。円Aの半径が2cm、円Bの半径が4cmなら、半径は2倍ですが面積は4倍になります。見る人が半径と面積のどちらで量を比較するかによって、印象は大きく変わる可能性があります。
例えば数値が2倍なのに円の半径を2倍にして描くと、円の面積は4倍になり、差を大きく見せることがあります。円の大きさを意味のある数量に対応させる場合は、何に比例させたかを確認してください。この問題は棒グラフの縦軸だけではなく、図形の面積でも起こります。
図を見るときの四つの質問
第一に、図の目的は何でしょう。第二に、記号や色の意味はどこに書かれていますか。第三に、図から外された条件は何でしょう。第四に、その図から何を判断しようとしているのでしょう。最後の問いが重要です。位置関係を示すだけの図から、時間や費用の結論を引き出してしまうことがあるからです。
自分で図を作るときも、読み手が何を判断できる図なのかを先に考えます。必要なら「模式図」「縮尺は正確ではありません」「通常時の流れ」という注記を添えます。
手順の図は、誰が動くかも示す必要があります
学校の避難経路の図に「教室→廊下→階段→校庭」と書かれていたとしても、誰でも同じ速さで動けるとは限りません。階段を使いにくい人や、係の役割を持つ人には別の手順が必要な場合があります。安全に関わる図であれば、通常時の簡単な説明と、例外時の具体的な手順を混同しないことが大切です。
情報を減らして読みやすくした図と、実際の行動を指示する図は、求められる正確さが違います。図を使う場面を考えることは、作り手にも読み手にも必要です。
単純な図を二枚に分ける選択
料理の工程を示す図で、材料を入れる順番だけを描けば流れは分かりやすくなります。しかし加熱時間や材料の温度が省かれていると、実際に調理する人は困るかもしれません。そこで、最初の図は全体の流れ、二枚目は時間や温度という条件を示す方法があります。
情報を増やせばよいのではなく、一枚の図が答える問いを絞るのです。「全体を把握する」「実際に手順を進める」という異なる目的を、必要に応じて分けると、簡潔さと正確さを両立しやすくなります。
分かりやすい図ほど、注記の置き方が大切
一枚の図の端に小さな文字で「一部の条件を省略」と書かれていても、本文から離れた場所では読み落とされるかもしれません。図が示している結論のすぐ近くに、適用範囲や例外が分かる説明を置く方が誤解を減らしやすくなります。
例えば「通常時はこの順番」と図の上に書けば、その図が例外まで網羅していないことを先に伝えられます。図の中心となる情報を大きく、判断を変える条件も見つけやすく置く。図を作るときの読みやすさは、文字数を削ることだけではありません。
図の外側を読む練習
「植物が育つには水が必要」という単純な図を見たら、「水さえあれば育つ」という結論まで書かれているか確認します。実際には光や温度、植物の種類など別の条件があります。図が水の役割だけに焦点を当てたのなら、描かれていない条件が不要という意味ではありません。
一つの図を見たあと「この図を使って答えられる質問を三つ」「答えられない質問を三つ」書いてみると、図解の守備範囲が分かります。
図を読むときには、描かれている情報だけでなく、何を判断するために作られた図なのかも確かめてください。省略の仕方が目的に合っていれば、簡潔な図は有用です。
図解の良さを守るために
図は文章を全部載せ替える箱ではありません。中心になる関係を見せることに価値があります。読み手は図を見た後、「ここから言えること」と「この図だけでは言えないこと」を言葉にしてみてください。図を正しく使う力は、図に描かれていない部分を想像する力でもあります。

